2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

言葉を届ける 難

物凄い向かい風の中、僕は前を歩く友人に「風すげえな!」と言った。しかし、僕の細い声は風に跳ね返されてしまい、友人の耳たぶにしがみつく所までも行かなかった。それならばと足を早め、友人の前に位置取り振り返って、風を背に受けながら「風すげえな!…

祖父の「マジで」

三連休だったので、久々に実家に帰省した。僕が幼い頃から立て付けの悪かった玄関の戸が綺麗に修復されており、以前と同じように力を込めて開けようとすると物凄い勢いで戸が滑って行って少し焦った。台所に祖父がいたので、帰ったよと声をかけると、開口一…

エッチな本を僕は買ったことがない

27年間の人生の中で、僕はエロ本を買ったことが無い。僕は高校を卒業するまでは離島に住んでおり、高校を卒業して島の外に出る頃には携帯電話を手にしていた。その端末があれば、わざわざ足を運んで、羞恥心と格闘しながらエロ本を買う必要は無い。家にいな…

さだまさしフォルダ

メモ機能の中に、さだまさしフォルダがあった。何だと思い開いてみると、中身は空だった。僕はこのフォルダをどういう目的で作り、何を書き留めたかったのだろうか?南こうせつが滝を登るにつれて、さだまさしになると思っていた。さだまさしが力を使いすぎ…

夕日の成分が、今日は心地良かった。

今日はクーラーの効いた部屋で一日中ゴロゴロしていた。この日記を書いている最中もゴロゴロしている。こんなただただ怠惰を極めたという事を書く必要は無い。しかし、今日の怠惰は特別だった。日が傾いてきて、光線の色がオレンジに変わる。あの光には厄介…

夏が来る、それなのに、僕の血は薄い。

先々月の頭から、運動後に酷い息切れと耳鳴りがする様になった。特に耳鳴りが辛い。心臓の音が頭の中に大音量で響くのである。どくんどくん、なんて生易しいものでは無く、ドン!ドン!ドン!と、さながら和太鼓の様な振動が、僕の鼓膜を叩くのである。体の…

蜘蛛の糸

今朝は珍しく目覚めが良かった。滅多に開けることの無いカーテンを開けると、優しい朝日が僕を包んだ。いつもの、僕を貫通して起きろ!と怒鳴る様な朝日ではなく、おはよう、と肩にそっと手を置かれるような、そんな朝日だった。嫌な予感がする。さわやかで…

片方だけの靴下

今日窓口で切符を発売していると、レンタカー屋のおじさんが、窓口に近寄ってきて、自分の足元を指差した。何があるのだろうと見てみると、靴下が片方落ちていた。一応落とし物としてこちらで預かることになったのだが、何故靴下を片方だけ落としていったの…

ウォーキングデッドモスキート

夕暮れ時、太陽が傾いて涼しくなる頃に、僕は散歩しに外に出る。昼間熱せられた世界が徐々に冷えていく中を歩くのが好きだ。ある一点を除いて。ぷーん頭の後ろで、甲高い羽音が聞こえた。来た。蚊だ。後ろ手に払うと、その音は遠くに消えた。しかし、いっと…

話しかけないでくださいステッカー

あらゆる店に、話しかけないで下さいステッカーを置いて欲しい。それか、一人にして下さいステッカー。それを肩や鞄にぺたりと貼る。おでこでも良い。それを貼ったお客には、店員は話しかけてはならない。そんな物が開発されないだろうか?自作したステッカ…

コーヒーの中の混沌

お腹が空いたので、自動販売機でカロリーメイトのチョコ味と、健康ミネラル麦茶を買った。僕はこのお茶を鶴瓶茶と呼んでいる。単純に鶴瓶さんがCMに出演しているからと、ただそれだけの理由だ。究極に、誰にも会いたくない日がある。そんな日に限って、買…