片方だけの靴下

今日窓口で切符を発売していると、レンタカー屋のおじさんが、窓口に近寄ってきて、自分の足元を指差した。


何があるのだろうと見てみると、靴下が片方落ちていた。


一応落とし物としてこちらで預かることになったのだが、何故靴下を片方だけ落としていったのだろう?


鞄や財布ならまだ分かるが、靴下である。

靴下の上には必ず靴かスリッパを履いている筈なのである。

様々な考察がなされたが、核心に迫るものは無い。


その時、僕に電流が走った。

現実的な可能性を含んだ答えを考えるのはナンセンスだと。

これは人知を超えた事件だと思った。

この靴下の持ち主は、何者かの手によって靴下以外を消し去られてしまったのだ。

そうに違いない。


しかし、僕はこの考えを胸にしまっておくことにした。

もしも僕の考えが核心に少しでも触れ、その何者かに察知された場合、その靴下の持ち主の様に消されてしまうのではないかという危機感と、

そんな戯言を発言した後の職場の空気を考えると、二重の意味で危ないと思ったからだ。